感想:異世界おじさんⅢ(殆ど死んでいる)
※ネタバレあるかも知れませんのでご注意を。
異世界から現代日本へ帰ってきたおじさんが語る、異世界冒険譚?
残念な冒険、シュールコメディ漫画です。
異世界おじさんⅢ
3巻の表紙は前回ゴブリン退治で出てきたアリシアです。
正統派ヒロンといった感じで可愛いのですけど、ツンデレさんやメイベルちゃんと比べるとちょっとキャラ立ちしていないのが否めなせんが、比較対象がおかしいですね。
日本なら教師にいそうなしっかり者のお姉さんのように思えますが、今まで散々裏切られてきたので、彼女もきっと相当アレな性格をしているのでしょう。
何気にツンデレさんやメイベルちゃんよりも服装の露出が高いんですよね。スカートのスリットはめっちゃ深いし、脇が見えているからノースリーブの上に短いマントを羽織り、アームカバーをしているわけです。着るの大変そうですねぇ。
でも、純情そうなところを見ると自分の趣味でというよりも、友達からグイグイと勧められてこの服装になった背景がありそうです。
1. あらすじ
1ー1 3行あらすじ
精霊と話せるおじさんマジ強くて
ツンデレさんとメイベルちゃんマジ可愛くて
藤宮家はマジヤバい
1ー2 ざつあら(雑なあらすじ)
氷の一族の開祖は日本の武士で凍神剣は彼が転移した際に神からもらった転移特典でした。
おじさんの特典は何なのかと過去に迫ると”翻訳”だったと発覚!精霊と話せるってそういうことだったんだね。
凍結封印後は天国だし、おじさんはモノホンの天国に行けばいいと思ったけど、メイベルちゃんの引きこもり力が高すぎてすべて持っていかれました。
再びアリシアたちと邂逅して、なんだかんだでこの3人とは縁があるなぁと思っていた矢先に藤宮家の闇に触れて、たかふみも闇堕ち!
2. 個人的ハイライト
2-1 おじさん
右も左も分からない土地でいきなりタコ殴りにされようとも、解り合おうとするおじさん。
そう、おじさんは何気に聖人かよって言いたくなるような一面があります。
自分のことを銅貨3枚で買い取って一週間完全に忘れた餓死寸前にまでにしくさった見世物小屋の主人も助けたりと、人ができているというのか、あるいは道徳観がいい方向にどこかぶっ壊れているのでは思ってしまいます。
周囲の人たちが言うことなど知ったことではないとSE●A道を突き進んできたおじさんですが、人間関係はとても大事にするんです。
その人自身が解決しなければならない問題には口を出さず、見ていることしかできないと告げたりと男気もあります。
この辺り、何かエピソードがあるんでしょうかね?
まあ、恋愛ゲームはやってこなかった人ですから、男同士の熱い友情には敏感なのかもしれません。
現実をゲーム感覚で判断しているところがあるので、ぶっ飛び方を間違えると本当に怖い人なんですけどね。
2-2 たかふみ
おじさんから魔法を借りてあんなことこんなことを考えていたたかふみ。
これは闇が深いのか、それとも陰キャ特有の強くなった時の凄まじい妄想力なのか。
普段弱い人が力を持つと調子に乗りやすいのはキャンチョメのそれなのですが、藤宮さんがいればカバさんとなって止めてくれるでしょう。
まあ、たかふみがそうなるとしたら、藤宮さんが理由になりそうですけども。
3巻では、藤宮さんの記憶からちらっと子供の頃のたかふみが出てきますが、この頃のたかふみは状況判断を間違えていても、上級生に3人から藤宮さんを助けようとします。
しかし、今のたかふみは正義という刃で強い自分が弱い相手を叩きたいという願望があからさまに見て取れます。
それに対して、いつの間にか子供の頃のたかふみはいなくなってしまい、藤宮さんが少し不安そうに見ているのですが、たかふみはそれに気付いていません。
今後、たかふみと藤宮さんの関係が進むにあたって、その辺りが切り口となっていきそうですね。
高校時代に一家離散し、色々と拭えない何かがあるのは間違いないのですが、その時に一体なにがあったのか。
その時の事件からたかふみは何を抱えてしまったのか。
たかふみと藤宮さんの展開は、”ただの恋愛”じゃなくて”友情からの恋愛”であるからこその熱い物語になっていきそうですね。
2-3 ツンデレさん
ツンデレさんは本当にタフだなぁと思わされるコマでした。
おじさんから”門前払い”を受けたというのにグイグイといけるこの姿勢。
表情からは不安が見て取れます。
当然ですよね。あの夜、ツンデレさんとしてはそりゃもう一生添い遂げるくらいの覚悟をしたでしょう。
なのに、おじさんに扉を閉められたんです。
ツンデレさんがおじさんを刺しても誰も文句は言わないでしょう。
一生拭いきれないであろう辱めを受ければ不安にもなるものです。それでも、口が悪くともおじさんに迫っていけるのは本当に凄い。
全国の草食系男子を代表して見習いたく思います。
そして、おじさんから”勝手にしろ”と言われた時のツンデレさんの嬉しそうにニヤける顔がなんとも、いい!!
直後にメイベルちゃんがおじさんに絡みついてきて妬いているツンデレさんも、いい!!
さらに、メイベルちゃんにおじさんからもらった指輪を売っぱらうようにガンガン勧めるのも、いい!!!
これだけ乙女回路全開なツンデレさんですが、未だに心を開き切っていない節が見て取れます。
ツンデレさん、おじさん、メイベルちゃんでの朝食にて、なぜツンデレさんは名乗らなかったのか。
ツンデレさんが冒険者をやっているのは古代魔道具の探索と回収とのことで、少しばかりツンデレさんのパーソナルな部分が明らかになりましたが、まだ核心には入れていません。
任務の内容がとても1人でやるようなものとも思えませんし……。
それに、なぜ”エルフの郷里”の外にいるエルフは自分ひとりと言い切れるのか。
この時の冷たい目は何を意味しているのか。
デレッデレのくせになかなか謎が明かされませんが、これこそが今後の展開の鍵となっていくのでしょう。
2-4 メイベルちゃん
労働拒否宣言および氷の一族のやべーところを寝言で放ち、ツンデレさんから起こされてその事実を突きつけられたメイベルちゃん。
涙を流しながら自己暗示をかけるかのように労働を受け入れようとする様は、とても健気で無様です!
日本の社畜魂は400年の間で見事に失われたようですね。
もう完全に初っ端の冷たい雰囲気というか、棘のある鋭い面持ちはどこにもありません。
もはやあれは別の誰かだったとしか思えませんね!
ツンデレさんに養ってもらおうと一瞬でもイヌに成り下がってしまったくらいです。
おまけにあんだけ寝ていたくせに出立は夕方5時からとか、君はもう人間社会でやっていけないよ。
今まで凍神剣頼みでグータラしまくりの生活を送っていましたからね。生活リズムを変えるのが辛いというのはわかりますが、少しは頑張ろうという意志を示しなさい。
出てくる度に自ら尊厳を傷付けていくスタイルは大好きです!
ここまでボロクソに言っておいてなんですが、この子、ポテンシャルが高いのは事実なんですよね。
ヘトヘト状態とはいえ、おじさんを組み伏せたのは事実ですし。
おじさんが攻撃を途中でやめたのも理解したりと、冒険者としてやっていくには一級品の腕があるのでしょう。
また、氷の一族についての語りは氷雪を舞わせ、語り方にも厳かな雰囲気があります。
その姿はとても無職の宿無しとは思えません。
一生懸命練習したとも言っていましたし、やればできる子を地で行く子なんでしょう。
おじさんと同じく何やらかすかわからず、何やらかしても納得できるタイプの人間ですね。
2-5 藤宮さん
おじさん、ツンデさん、メイベルちゃんのパーティー瞬殺解散と夕飯の唐揚げを天秤にした結果、選択をしを誤って後悔する藤宮さんです。この、のびーっとした感じ、大好きです。
今回、藤宮さんの大学生活がちらっと垣間見えました。
藤宮さんの高校からの友達、沢江さんが出てきて、藤宮さんを狙っている野郎どもが結構いるとかなんとか。
藤宮さん、過去に目を瞑ればめっちゃ可愛いですからね。
幼い頃は腕白小僧なんて可愛い表現を用いたら、男子を持つ全国のママさんから訴訟を起こされかねないほどの子供です。
というかね、上級生の男子に張り手されてもびくともしないどころか、張り手した側が手首痛めるほどのボディして幼い女の子ってなに?
すべてのロリコンの幻想をぶち殺すような小学生ですよ。いや、ぶち殺した方が世のためな気もしますがね。
なんなら、小学低学年時代はたかふみの方がヒロイン力ありますから。
それにしても、たかふみが現れた途端にか弱さを演出するとは、藤宮さんの恋心は結構長いんですねぇ。
たかふみを異性として意識し始めたのはてっきり中学時代からかと思いましたよ。
そして、驚愕すべきはあの姉にしてこの弟あり!
下に育ち盛りがいるとは言ってましたが千秋くん、育ちすぎぃ!! それも最悪な方向に!
つーか、こんな小4がいてたまるか! 10歳かそこらって面構えじゃねぇだろ!?
どう見ても職質経験済みにしか見えねぇ!! 小4で職質受けたことがある人は是非教えてもらいたい!!
藤宮家はあれか!? 小3辺りで整形手術およびロボトミー手術を施されているのか!?
年齢二桁に達したら、大人の仲間入りとして改造手術を施術させるのか!?
ごほん。
口が悪くなってきたので、藤宮さんの”今”の話に戻しますが、正直、たかふみと藤宮さんって友情方面では相性良くても、異性としてはそこまででもないのかなぁと思っていました。
理由は藤宮さんがたかふみのことをあまり”知らない”ように見えたので。
女の子としてたかふみに意識してもらいたい、という気持ちが先に出すぎていて、たかふみがどういう人間なのか、いまいち見えていないのではないか?と思えてて。
もしかしたら、藤宮さんはたかふみに失望する日が来るのではないかなぁと不安に思いましたが、たかふみのことをちゃんと窘めていたりしているので安心しましたよ。
まあ、たかふみが誰かに取られることはないでしょうが、長年の恋心です。
ちゃんと成就させて欲しいですね。
2-6 アリシア
2巻どころか1巻から既に出ていたアリシアです。
ツンデレさんやメイベルちゃんと解散した後、おじさんは伝説の勇者を見物したいと探していましたが、ここでまさかまさかのアリシアが伝説の勇者だったとは!
おじさんはそんな伝説の勇者を通算で3回も返り討ちにしているわけですが、正直、アリシアたちよりツンデレさん1人の方が全然強そうに見えます。(おじさんは”翻訳”があるため規格外なので)
伝説の勇者については考察で述べるとして、ここではアリシアパーティーについてちょっと考えます。
2巻にて、情報とは違うとはいえ、ゴブリンの大群の退治を任されたメンバーです。それなりに腕が立つのでしょう。
この3人はどういう関係なのか?
おじさん、ツンデレさん、メイベルちゃんのような会ってからまだ日が浅いようには思えません。
オーク誤解でおじさんを3回も襲撃しているところから見て、普段からこの3人で組んでいるのが伺えます。
アリシアとライガのやり取りや、アリシアがエドガーから剣を借りるところを見ても、とても仲睦まじく見えますし。
状況から判断するに、断定情報としては「この3人は普段からパーティーを組んでいる」、「3人とも、冒険者稼業をしている」の2点くらいでしょう。
年齢はわかりませんが、全員20歳前後といったところでしょうか。
となると、3人は幼い頃からの知り合い、あるいは冒険仲間で非常に連携が組みやすいか。
2巻にて、ゴブリンを退治の報酬を話した際、おじさんの嫌味(おじさん自身にそんなつもりは微塵もない)をこの3人は笑い飛ばした辺り、結構な熟練者と思うんですよね。
冒険者として経験を積んできたからこそ、嫌味を言える人に対してむしろ好感を持てるといいますか。
そうなると、場数を踏んできた冒険者仲間といったところでしょうか?
おじさんとは積極的に関わらないかもしれませんが、注目の人物ですね。
2-7 21時入眠的に愛してやまないコマ
いや、おじさんには悪いのですがこのコマ、ジワジワくるんですよ!
何だこの妙な疾走感は、と。
あと、顔は多分使い回しなんでしょうけど、それも相まって絶妙なバランス感とアンバランス感で込み上げてくる笑いがあります。
いや、それにしてもおじさんの異世界生活、最初の頃は本当にろくでもない目に遭っていたんですね。
1巻の時に粗方わかっていたつもりなんですが、こう丁寧に見せられるとたかふにや藤宮さんのように”改めて重い”という感想しか出てきませんわ……。
3. おまけをちらっと紹介
ゴブリンに捕まったツンデレさんとメイベルちゃん。
ガタゴトガタゴトと貨物車で運ばれていると、おじさんが助けに来ます。
ツンデレさんは自力で手錠を破壊してあっさりと自由の身ですが、メイベルちゃんはそうもいかず、おじさんが手錠を外そうとするもなかなか上手くいかずメイベルちゃんが痛みで声を上げますが、、、
これ絶対誘ってるよね!?
これで誘ってないとか無理があるわ!!
あ、でもメイベルちゃんはオーク強制睡眠婚したわけだし、それはつまり夫婦の契りを結んだと言っても過言ではないわけだ。
そう!
これは合意です!!
4. ちょこっと考察と総括を
伝説の勇者について、考察をしてきたいと思います。
まず、前提条件。
ツンデレさん曰く、
1.ここ50年は空席だった。
2.魔物の大群を退けた
3.2の功績で勇者の称号を得た
4.現在、アリシアが伝説の勇者
「3」の勇者の称号を得たということは、勇者はあくまでも称号であって、1人とは限らないと思ったのですが、「1」より長らく空席らしいので、基本的には勇者の称号は存命しているただ1人が得られるみたいですね。
で、それが現在はアリシアだと。
そして、アリシアは「2」の功績があるわけですが、魔物の大群を退けたっておじさんが色々とバカやってたゴブリンの軍勢ですかね?
あるいは、おじさんから記憶を消された後にそういう依頼を受けたのか?
しかし、魔物の軍勢なんて情報があればおじさんやツンデレさんが駆けつけそうなものですけど。
ならば、おじさんと出会う前に退けたのか?
もしそうならば、ゴブリン退治の時には既に勇者の座についているはず。
50年、空席だったというツンデレさんの情報が古かったということになりますが、果たして?
もし仮に、ゴブリン退治によって得た称号ならば、本来倒したのはおじさんなのでこの3人としては倒した記憶もないけど自分たちが倒したとしか思えない状況ということで、困惑しながら勇者の称号を受けたことになりますね。
漫画の展開的に、その可能性が一番高いですが。
おじさんがやらかした結果をアリシアたちが引き継がされたって感じになりそうですね。
しかし、そうなるとやはりアリシアたちは熟練の冒険者なんでしょうかね。
流石にペーペーに勇者の称号を与えるのは……いや、実績がないというのは実力が未知とも取れますね。
ふーむ。
アリシアたちが何者なのは次巻にてわかるでしょうけど、そもそも”伝説の勇者”とはなんなのか?
称号は誰が与えているのか?
もしかしたら、かつての伝説の勇者も氷の一族のように日本人だったのかもしれません。
どうやら転移特典があるようですし、転移者ならば初代(?)伝説の勇者も氷の一族の開祖やおじさんのようなチート性能を持っていたはずですし。
もし、そうであれば50年ごとに日本から転移者が送られている?
そんなところで、考察は終えようと思います。
3巻はおじさんとツンデレさんのイチャイチャ成分や、転移者の特典や、メイベルちゃんのダメさっぷりや、藤宮家の劇的ビフォーアフターという闇とか、たかふみの性格の陰とか、アリシアの勇者発言など色々と情報の濃密な巻でしたね。
次巻ではメイベルちゃんがちゃんと働けるのか、アリシアたちが何者なのかが明かされると嬉しいですが、この漫画はなかなか思うように展開してくれませんからね。
いつも予想の斜め上をいきます。
個人的にはそろそろツンデレさんの過去が知りたかったのですが、この幕引きではそれもまた先になりそうです。
ではでは~。
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感想:異世界おじさんⅡ(殆ど死んでいる)
※ネタバレあるかも知れませんのでご注意を
異世界から現代日本へ帰ってきたおじさんが語る、異世界冒険譚?
残念な冒険、シュールコメディ漫画です。
異世界おじさんⅡ
今回の表紙はメイベルちゃん。
私はこの子が一番のお気に入りです。1巻の感想ではあまり目立った話が出てこなかったのでスルーしましたが、ツンデレさんとは違うベクトルで見ていて楽しい女の子です。
氷の一族の末裔にして、生粋の引きこもり少女。
青みのかかった真っ直ぐな髪がとても綺麗ですね。
とてもクールでぶっきら棒な性格をしていそうですが、全然でした!
作中でもぶっちぎりの甘ったれです!
1.あらすじ
1ー1 3行あらすじ
おじさん
異世界でも日本でも
めっちゃやらかす
1ー2 ざつあら(雑なあらすじ)
封印都市ルバルドラムでは結界ぶち破るし、ツンデレさんに一夜の過ちを犯すし、仲間フラグをバキバキに折っていく上、挙句の果てにはメイベルちゃんにも結婚詐欺を働きます。
日本では恋バナで禁断の魔法を使うわ、それで藤宮さんがトラウマを抱えるわ、おじさんのYouTuberのプライドは粉砕されるわと、予想だにしない展開で精神的な波乱万丈が起きまくり。
でも今回のインパクトは藤宮さんの劇的ビフォーアフターにもっていかれましたけどね!
2.個人的ハイライト
2-1 おじさん
おじさん相手にデリケートな恋バナなんてできないと勘違いを起こしたおじさんがツンデレさんに化けるわけですが、たかふみが瞬時にゲスいことを思いつき一瞬で乗せられるおじさんです。
チョロくてめっちゃ可愛いです。
とても中身がSE●Aで構成された34歳のおじさんとは思えません。
今回、おじさんはルバルドラムで盛大にやらかすわけですが、事なきを得ます。で、ツンデレさんとめっちゃいい雰囲気になりそうだなぁと思いきや一転、おじさんは即座に逃げ出すわけです。
”どれだけ他人のことを信用していないんだ”と嘆くたかふみですが、おじさんは1巻で狩られる、吊るされるを経験しているわけでして、おまけにツンデレさんの態度もそのまま受け取ってしまうものですから、おじさんとしてはやはりツンデレさんを完全に信用するのは難しいのでしょう。
むしろ、酷い人間不信となって”異世界に転移した俺はオークと誤解されて狩られまくったから世界征服に乗り出した件”みたいな物語が出来上がりそうです。
でも、おじさんは藤宮さんの恋の力になろうとしたり、例え苦手な人だろうと人の努力を踏みにじるようなことはしたくないなど、他人に対して思いやりを持てる性格なんですよね。
おまけに、藤宮さんがシャワー浴びている最中は外出するなど振る舞いも紳士的です。SE●Aで学んだとでもいうのでしょうか?
反面、ツンデレさんは泣かせるわ、メイベルちゃんにも結婚詐欺を働くわと、なかなかの常識の欠けっぷりを披露します。
ここはSE●Aで学ばなかったのか……。
まあ、座右の銘がぷよ●よの攻略本の言葉ですからね。
ゴブリン退治もゲーム知識でどうにかしようとしているくらいに、現実とゲームの区別がついていない人です。
めっちゃバカにしていてなんですが、少なくとも座右の銘である”ピンチはチャンス”はおじさんらしさを表していると思います。
どんな逆境であろうとも諦めることはなく、ひたすら挑み続ける姿勢。それはまさにゲーマーに顕著な特徴でしょう。
私も子供の頃にどうにもクリアできないシューティングゲームがありまして、何度挑んだことか……。
結局、私は投げ出してネットでプレイ動画を視聴しましたが、あれは小学低学年がやる内容ではありませんね。まあ、私はマリオもろくにクリアできませんでしたけども。
その点、おじさんは絶対にクリアするまで諦めないでしょうし、やり方も色々と試行錯誤していくでしょう。
”自分のやりたいことを貫き通す力、それが強さ”
個人的にはこちらの方が座右の銘としてふさわしい気もしますが、やっぱりSE●Aなんだよなぁと思うと、何とも言えませんねぇ……。
2-2 たかふみ
藤宮さんがシャツ一枚でいるとは知らずにカーテンを脱衣場のカーテンを勢いよく開けてしまったたかふみですが、その時のこの反応は意味するものは……?
ちょっとたかふみについて考えてみると、彼も一家離散したりアパートで1人暮らしをしバイトで生活していたなど、なかなかにキツイ過去を持っています。
アルバイト生活を否定する気はありませんが、おそらくは就活も上手くいかなかったのでしょう。
考え方そのものは割りと安定志向であることが伺えますので、高校卒業後にわざわざアルバイト生活を選択するとは思えません。
そして、おじさんに負けず劣らずの人間不信者です。
おじさんがYouTuber剥奪危機に晒され、事情を話して”チャンネル登録をお願いします”とコメントしたと言うと、”弱みを見せたら終わり”などとネットの負の面を叫びます。
ですが、実際には多くの人がおじさんのお願いに協力し、おじさんは無事にYouTuber剥奪を免れます。
たかふみは決して疑り深いわけではないと思うのですが、人を信じるのは難しい考えが根付いているように見え、さらには相手も自分と同じ考えだろうと思い込んでいる節があります。
たかふみとて男ですからね。
いかに藤宮さんを意識しないようにしようとしていても、着替えを見てしまったりすれば嫌でも”男としての意識”が出てくるわけで。
ただ、それは藤宮さんは望んでいないだろうと。
望んでいると思ってしまうのは自分にとって都合のいい妄想だと考えちゃうんじゃないでしょうかねぇー。
それは誰にでもあるあるな悩み。
なまじ幼い頃からの親友で、中途半端な時期に離れてしまったからこそ、異性として意識してしまったら歯止めが効かなくなってしまう。
たかふみには是非とも藤宮さんとのイチャイチャな一歩を踏み出してもらいたいものです。
2-3 ツンデレさん
2巻はツンデレさん成分が豊富だったので選ぶのに非常に苦労しましたが、やはりツンデレさんの人柄が一番良く出ていたのはここかなぁと思います。
ルバルドラムでおじさんがやらかし、街へなだれ込むモンスターに1人で立ち向かうわけですが、その時に見せたこのとても優しい笑み。
確実に死ぬであろう戦地へと彼女が迷いなく突っ込めるのは一流の冒険者であるが故なのでしょうが、なぜそんなにも簡単に覚悟を決められてしまうのか。
もはや悲しさすら覚えます。
そして、おじさんに”逃げて”と一言を告げて行く姿は……。
本当になんでこんないい人があんな辱めを受けなければならないというのか。
ツンデレさんには報われてほしいのですが、おじさんが現代日本へ帰って来た時点でそれは叶わないわけです。
何とも切ない……。
話変わって、おじさんが異世界でお酒デビューした時にツンデレさんがいつもの無骨な格好から打って変わってドレスコーデの淑女姿で出てきた時、もう、本当にテンションが上りましたよ! この子は本当に綺麗だなぁ!
ツンデレさんの性格上、ワイルドな格好といいますか勝ち気な立ち振る舞いの印象が強かったので、清楚な出で立ちをされるとギャップもあって堪りませんよ!!
でも、1巻のおまけでも、おじさんのパーカーと交換でツンデレさんが自分の服を渡したとのことですが、その時の服もこの手の清楚でスッキリとしたドレスでしたね。
勝ち気な性格でも趣味は乙女チックなんでしょうか。
いやもう、ツンデレさん、本当にズルいわぁ!
そして、こんなツンデレさんに恥をかかせたおじさんは八つ裂きにされればいいと思いますが、既にリンチ経験は十分なくらい受けているんですよね……。
くっそ、おじさんの方がズルいわぁ!
ちょっと気になる点として。
ツンデレさん、おじさんがルバルドラムの結界を張り直したことを後で知ったご様子。まあ、ルバルドラムではおじさんが張り直した時に、ツンデレさんはおじさんの側にいませんでしたからね、そこは不思議ではないのですが。
ツンデレさんはどうやってその事実を知ったのか?
おじさんがルバルドラムの結界を張り直した事実を知るのは現状、今回出てきたアリシアのみ。
そのアリシアも他の誰にも言っていないようです(言っても誰も信じないから)。
もしかしたら話したけれど誰も信じませんでした、というものかも知れませんが、仮にアリシアが誰にも話していないとすると、おじさんが結界を張り直した事実を知る人が他にもいるわけです。
あるいは、ライガとエドガーもアリシア同様に見ていて、誰かに話したのかも知れませんが可能性としては低そうです。
となると、ツンデレさんは精霊から聞いたんでしょうかね。
少なくとも、おじさんは精霊と話して魔法を使っているわけですし、魔法を使えるツンデレさんが精霊と話せるのも頷けます。
あれ? 精霊と話して魔法と使っているのなら、おじさんは魔法を使って精霊と話しているわけではない?
でも、おじさんがメイベルちゃんを取り押さえていた時は精霊がどうとか……?
ちょっと、そこは置いといて。
仮に、ツンデレさんが誰から聞いたわけでもないとするなら、”今夜おごって”と約束したのに逃げ出したおじさんを追うべくイキュラス・エルランのような記憶系の魔法を使ったことが伺えます。
そうまでしておじさんを追ってきたなら、たかふみが言うように、ツンデレさんは確かにストーカーですね。
2-4 メイベルちゃん
逆恨みでおじさんを暗殺しようとしたメイベルちゃんですが、おじさんから心配されて涙目になってしまいます。
思い返せば登場時、メイベルちゃんの家族はいませんでしたし、村の人達からも一線を引かれた状態でしたから、彼女は優しさとか温かさに飢えていたのかもしれません。
1巻にて、おじさんは凍神剣を使わずに魔炎竜を倒しことで、”今後の自分”についておじさんに相談を求めた結果、おじさんから引きこもりを応援されたメイベルちゃん。
あの時、メイベルちゃんは自分を変えよう、変わらなきゃと思い、でもどうしたらいいのかまるで見えなかったからおじさんを頼ったわけですが、おじさんに”自分の好きに生きていい”と言われたことから”自分の欲望のままに生きよう”としたわけですね。
せっかく、自らの意志で立ち上がろうとしたのに、おじさん、あんたはどうしてベストタイミングでワーストイベントを起こすんだ。
で、引きこもり対策に村人は家を薪にしたり、さらにメイベルちゃんの飼育小屋を用意されたりとしたわけですが、まあ、これはおじさん云々関係なく、氷の一族は代々この村で調子ずいてたパターンですね。
凍神剣がないと魔炎竜の脅威を怯えて生活することになるよね、と氷の一族は村人たちの足元を見てVIP待遇を受けていたのでしょう。
初代が築いた財産を、2代目3代目が駄目にするパターンですな。
しかし、今度こそまともな人生相談となりまして。
凍神剣の”護り手”ではなく、自ら凍神剣を”振るって”いこうとします。
メイベルちゃんはそんなこと考えたこともなかったと言いますが、正直コレは意外です。
続く台詞から氷の一族は400年もの間、凍神剣を振るうことをしなかったと推察できますが、それはまたなんでなのか?
謎が多い一族ですね。
なんにせよ、メイベルちゃんは今後、凍神剣を振るって、冒険者として頑張っていくわけです。
労働を舐め腐ったダメダメな彼女ですが、どう成長していくのか楽しみですね!
2-5 藤宮さん
いやぁ、もう、今回は本当にこのインパクトがデカかった!
最初、下品な汚らしい子供が出てきたなぁと。この後、藤宮さんがたかふみを助ける展開なのかなぁと思いきや、まさかコレがアアなるとは。
ほんとに、どうなってんの?
劇的ビフォーアフターもいいところでしょう。
人類の進化がどこかであったでしょう!
完全にメタモルフォーゼが行われたでしょう!?
美しい蝶も元は青虫的な話か。藤宮さんは昆虫だったのか!?
中学入学時には今の藤宮さんの面影がきちんとありますので、羽化したのは小学高学年の頃ですね。
その頃に一体何が起きたのか!?
しかし、これほどまでに変化した藤宮さんをたかふみは一目でわかるとは、恐れ入ります。
見た目も中身も手術しただろうとこっちは言いたくなるんですが、やはり幼少の頃からの友情があると違うものなんですね。
さて。今回は藤宮さんがたかふみに踏み込みましたね!
結果的にはたかふみにいい感じにまとめられましたけど、それでも”そういう風に見られて、私は嬉しいよ”とたかふみに伝えたのは大きい一歩だったと思います。
それに、たかふみも少なからず藤宮さんのことを異性として意識しているのがわかりましたし、やはりこの2人の関係はどういう風に進んでいくのか。
ジャンプなどのラブコメと違ってヒロインが多数出てくるわけではないので、道筋は1本道なんですがどうにも進み方が紆余曲折でおもしろい。
家族同然の幼馴染が、どう異性として切り替わっていくのか見届けたいと思います。
2-6 21時入眠的に愛してやまないコマ
今回、私にめっちゃ刺さったコマはこちらです。
いやぁ、この漫画、本当に好きなコマが多すぎてめっちゃ困るんですよね。
ただ、この明確に敵意が表した凍神剣の氷が圧巻でして!
子供の頃からアンパンマンよりもバイキンロボット、地球防衛軍よりゴジラ、ウルトラマンよりバルタン星人が好きという嗜好の持ち主なので、こういう異形にはどうにも食指が動くんですよ。
おじさんに詐欺られたメイベルちゃん。
この氷はメイベルちゃんの心と連動しているため、まさに乙女心を踏み躙られた怒りを表しているわけです。
筆舌に尽くしがたい形状ですが、般若面と蟷螂を混ぜ合わせたような印象を受けますね。
そう! 怒り(=般若)と殺意(=鎌)が滲み出ているような!
この後、凍結封印されたおじさんの格好も大好きなんですが、あちらは選びたいコマが他にもありすぎてまとまらないためこのコマを選びました。
3. おまけをちらっと紹介
珍しい(?)ことにおじさん、ツンデレさんとダンジョン攻略をしていた模様。
ダンジョンの罠がツンデレさんを襲いますが、手練な冒険者のツンデレさん、耳にかすり傷を1つという軽傷で罠を防ぎます。
ですが、そのかすり傷が命取りに……。
罠には毒が塗られていたようで、即座に毒がツンデレさんを襲います。
そこでおじさんが毒抜きに入るわけですが、、、
毒抜きです。
えぇ、間違いなく毒抜きです。
ほら、吸われると案外体力持ってかれるものじゃないですか。
これは救命行為なんですよ!
一刻を争う緊急事態なんです!
このままではツンデレさんの尊厳、、、じゃなくて、命が危ないんです!!
だからおじさん!
もっとやれぇぇぇぇぇ!!
……。
とはいえ、そうはいかないのが世の常でして。
途中でイキュラスエルランがブラックアウトしてしまいます。
うーん、ツンデレさん、ガードが堅いですなぁ。
強引に迫られると駄目なくせに。
ちょっと真面目な予想をすると、もしかしたらツンデレさんは精神干渉を受けたことがあるのかもしれませんね。
仲間と思っていた人から精神干渉を受け、心に深い傷を負ってしまったのではないでしょうか。そこで、おじさんレベルの魔法を以てしても干渉できない精神防御アイテムを身に着けているのでは?
まあ、冒険者という職業上、ただの自衛の可能性も十分ににあると思いますが。
4. ちょこっと考察と総括を
今回の考察は氷の一族について。
いやぁ、2巻の幕引きはまさかとやられましたよ。
いずれおじさん以外の転移者が出てきそうだなぁと思っていましたが、氷の一族の先祖が日本出身者とは!
ちょっと、氷の一族について少し事実確認をしてみます。
まず、氷の一族とは”凍神剣の護り手”です。
で、凍神剣とはなにか?
・魔炎竜を倒せる唯一の武器
・封印されてあり、”護り手”(=メイベルちゃん)の心の氷を溶かさないといけない
・封印の氷は”護り手”の心と連動している
・封印の氷はともかく、凍神剣は誰でも使用可能(=特別な血筋とか関係ない)
ふーむ?
氷の一族は凍神剣の護り手の役割で、それはおじさんのような冒険者、というか魔炎竜を倒す人のために伝説の剣を護っているわけですね。
んで、誰でも凍神剣を扱えるとまずいので、凍神剣には一族の末裔(あるいは継承者?)の心と連動する封印を施されている、と。
推察ですが、おおよそそんなところでしょう。
しかし、そうなると氷の一族の祖先はどういう経緯で凍神剣を手に入れたのか?
異世界に転移させられて、何らかの出来事があって凍神剣を手に入れたわけです。
疑問なのが凍神剣は元から異世界の武器なのか?
もし、凍神剣が異世界由来のそれを日本人が手に入れて、自分の子孫の心と連動した封印を施し(または施さざるを得なかった)、他人が簡単に扱えないようにしたわけですね。
しかし、1巻の村長の話から察するに魔炎竜は定期的に復活する感じです。そして、今回のツンデレさんとおじさんの会話(第12話)から魔炎竜は凍神剣による凍結封印で倒すしかない、とのこと。
実際はおじさんがやったように凍神剣なしでも倒せるわけですが、少なくとも異世界では凍神剣を使わないと倒せないと伝わっています。
となると、氷の一族の祖先はなんだって凍神剣にそのような封印を施す必要があったのか?
そもそも自分のものでもないのに封印をするのはどうなのか?
うーん、謎ですね。
とはいえ、凍神剣が異世界の武器ではない、というのもよくわかりません。
なにせ、転移者は日本出身なわけです。
グランバハマル以外の魔法が使える異世界からやってきたならわかりますが、日本由来の武器で異世界の強大な竜を倒せるとは思えません。
いや、日本由来の武器で、それを凍神剣にまで昇華させたと考えれば色々と筋は通りますね。
ルバルドラムのような街1つを何百年と覆うような結界もあるわけですから、武器に強大な魔法を施せても不思議ではないでしょう。
ツンデレさんがおじさんに”なぜそんなに強いのか?”と尋ねていましたが、氷の一族の祖先が武器にパワーアップを施したように、おじさんもなんかやらかしているうちに自分をパワーアップさせるイベントを行っていたのかもしれませんね。
さて。
2巻は藤宮さんのメタモルフォーゼや、ツンデレさんの可愛さや、メイベルちゃんのお家事情などなど、どこをどうツッコんだらいいのかといった激動の内容でしたが、最後の幕引きにもっていかれましたよ。
次巻はどうなるのか? 今から楽しみです。
ではでは~。
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感想:聞こえない君の歌声を、僕だけが知っている。(松山剛)
聞こえない君の歌声を、僕だけが知っている。
※ネタバレあるかも知れませんのでご注意を
1. 感想
あぁ、この作者の描く物語は本当に嫌いだ。
つまらなくて、ひどく苦しくなる。
どうしようもない現実の壁を見せつけられ、鬱屈な思いが雲のようにどんよりと頭の中を覆う。
そんな気分になるんです。
だけれども、私はこの作者が描く物語が大好きで。
おもしろくて、とても楽しくなる。
救いのない現実の中でも私たち人間とは救いを見いだせるんだ、という強くて優しい想いが胸から湧き出る。
そんな気分にもなるんです。
なぜ、そのような相反する気持ちになるのか。
不幸や絶望というものは劇的で、確定的なものであります。
例えば借金は簡単にできますが、簡単になくなるものではありません。途方も無い金額で返す宛もなければ、たかがお金で人生を圧し潰されてしまう人が今まで何人いることか。
また、お金がないから大学に入れないといった格差も確かに存在します。
そのような格差は人が夢を見ることすら許さないといった、脅迫や洗脳のような幻覚を与えます。
そして、救いというものは酷く曖昧で、掴みどころがないものです。
それでも確かに救いというものはあるし、それは錯覚で勘違いで気の所為で気の迷いかもしれませんが、でも確かに救われたと感じることができる。
暗い夜でも1つの星に安堵するような、愚かしさすら覚える救済。
1人で迷い震えている中、誰かが差し伸べた手に触れ、その体温を感じるだけでこみ上げてくる想いがあります。
それが人間なんですよね。
いや、もしかしたら人間だけではないのかもしれませんが。
恋する女の子は強いといいます。
それは恋や愛といったものがただの感情と一言で片付けられない何か、意志であり、強さであるからなんでしょう。
そして、女性は恋を前向きに、男から見れば暴力的なまでに、振り回せます。
最後の最後には、男は女に折れるようにできている生き物なのでしょう。
いや、男は言い訳や建前やどうしようもない事情や現実を頭から切り離すことができず、それでも想いというものは確かに存在するから、未練を断ち切れずに燻り続ける。
それに対して、そんな事情なんて知らずとも、男を振り回して捕まえて、その想いを真っ直ぐに伝える女性はなんと無神経でありながらも、輝いて見えるのか。
2. あらすじ
以下、ネタバレあるかもしれませんので、ご注意を。
『聞こえない君の歌声を、僕だけが知っている。』は、典型的なボーイ・ミーツ・ガールです。
両親を亡くした男子大学生エージが友人の勧めで「無声少女」の動画にハマります。無音であるはずのこの動画ですが、ある日、エージにだけ歌声が聴こえるようになります。
幻聴に悩まされたエージは、動画の少女に会えないかと手を尽くし、どうにか動画の少女と関係の有りそうな少女サクヤを見つけるわけですが、サクヤは動画なんて上げてなく”歌詞”を非公開でネットに上げていただけでして……。
この物語はSF的要素があり、非科学的なものです。
しかしそれはあくまでも物語の内容を伝えるための手段的装置であり、そこに物語の本質や中核はありません。
多分、ご都合主義的な展開がとにかく嫌いという方には合わないでしょうが、ありきたりであろうとも切実でやりきれない人間関係模様を好む人にはお勧めの作品ですので、是非お手にとって見てはいかがでしょうか?
3. 21時入眠的に愛してやまない台詞
あ い た い
これはもう、動画越しに声なき声で言った、サクヤのこの台詞で決まりでしょう。
サクヤは例えよくある話のありきたりな過去であろうとも、つらい過去を体験しております。そして、サクヤはエージの辛い過去を、苦しい思いを知っています。
なので、少なくともサクヤはエージが何の理由もなく音沙汰を切ったりしないとわかっているはず。
短い間の関係だし、ついこの間に知り合ったばかりであっても、サクヤはエージの人柄をわかっているはずです。
きっと、自分には話せない何かがあったんだ、と。
サクヤはそれを想像できないような人ではないでしょう。
それでも、彼女は会いたかった。
そして、サクヤは無声少女にも会いたかった。
例えほんの一瞬でも、サクヤは会って無声少女の声を聴きたかった。
エージ越しに聴く無声少女ではなく、ろくに話すことすらできずともサクヤは彼女の声を聴きたかった。
エージや無声少女に苦しみを背負わせてしまうかもしれない。
それでも、絆を断つ苦しみよりも、絆があるからこその苦しみをサクヤは選び、エージも選んだんでしょう。
エージが選び取れなかった未来を、サクヤはその手にした。
想いに勇気を乗せたその行動は、他ならないエージのお陰で、エージと引き合わせてくれた無声少女のお陰です。
皮肉で、ありきたりで、苦しくて、つまらなくて、救いなんて無いのに、その絆だけで満たされるんですから、人は単純です。
ではでは~。
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感想:異世界おじさんⅠ(殆ど死んでいる)
※ネタバレあるかも知れませんのでご注意を
最近ゲラゲラと笑えるおもしろい漫画を読んでいないなぁ思い、気になっていたこの異世界おじさんを読んでみました。
おもしろかったです。はい。
何も考えずにおもしろいとはまた違うのですが、展開にじわじわと来たり、絵に来るものがあるといいますか。
まあ、前書きもそこそこにして。
異世界から現代日本へ帰ってきたおじさんが語る、異世界冒険譚?
残念な冒険、シュールコメディ漫画です。
異世界おじさんⅠ
表紙を飾るツンデレさんがなんとお可愛いことか。
全体的に暗めな色合いの服装なのですが、髪の色が明るく、赤い靴がいい感じにアクセントとなっていて落ち着いた大人のコーディネートという印象になりますね。
ただ、ツンデレさんが美人顔であっても幼さが残っているので、ちょっと背伸びしている感がありますが、それがまた何ともいい。
1 あらすじ
1-1 3行あらすじ
異世界から帰ってきたSE●A好きおじさん
現代日本では魔法使ったYouTuberで
異世界では狩られたりイチャコラしたり
1-2 ざつあら(雑なあらすじ)
たかふみは昏睡状態だった叔父が目覚めたということで面倒を見に病院へ行きます。
叔父は17歳の時にトラックに轢かれて以来、17年間眠り続けていました。
しかし、おじさんはただ眠っていたわけではなく、その魂は異世界グランバハマルへと転移し、オークと誤解されて狩られたり、宗教的なダブーに触れて吊るされたり、RPGみたいな冒険を繰り広げ損ねたり、ツンデレなエルフさんを結婚詐欺に遭わせたりと、波乱万丈なひどい冒険をしてきたのです。
2 個人的ハイライト
2ー1 おじさん
随分と真剣な顔をしているけど、このおじさんのことだからどうせSE●Aだろうなぁと思っていたら、やっぱりSE●Aで、しかもか予想以上にどうでもいいものが原動力だったと笑わされました。
SE●Aを愛してやまないこのおじさん。
どれほど愛しているのかといえば、異世界から現代日本へ帰ってきて早々に尋ねることがゲームハード戦争におけるSE●Aの戦果を訊くほどです。
それだけではなく、過酷な異世界で生き延びられたモチベーションがセ●サターンソフト読者レース最終結果を知ることとも言っちゃう始末。おじさんが大好きなソフトが197位だったわけですが、その時、ただキレるのではなく甥っ子の前だからか一度強がりを挟むんですよね。
子供と違って大人がキレる時は、嵐の前の静けさと言いますか、一度冷静になる辺りが非常にリアルで笑えます。
SE●Aに生き、SE●Aから学んできたこのおじさんが17年もの間、異世界に飛んでいたのはゲームハード戦争をリアルタイムで見たら自殺しかねないからではなかろうか。
他作品を出すのは恐縮ですが、『ベン●トー』の主人公(並びのその家族と更には原作者)といい、SE●Aヘビーユーザーというのは頭の線が切れすぎでは?
そんな廃ゲーマーなおじさんですが、意外や意外にしっかりしているところもあるんです。
生命の危機から助けられたらしっかりとその借りを返しますし(←それで全てをぶち壊しにもしますが)、メイベルちゃんからの人生相談にも誠実に応え途中までは良いことを言います。
”人は自分のやりたい通りに生きていいんだ それを貫く力が強さだと 俺は思う……!”
こんな素敵な台詞も周囲に流されずにSE●Aをやり続けたからこそ出てきたんです。もっと別のところから学べといいたくなりますが、どこから学ぶのは人それぞれですからね。
これこそがおじさんの魅力なんです。
自らの意志を持って人生を切り拓くというのは、簡単なように見えて恐ろしく困難です。それでもおじさんはそれを子供の頃からやってこれるのは、やはり一つの才覚と認めざるを得ません。
反面、それは周囲の反対や意見を押し通すわけですから、おじさんが人間不信になったのもSE●Aが原因の可能性がありますね。なんて罪深いゲームメーカーなんだ。
異世界ではオークと誤解されてまくり、基本的にソロプレイで冒険仲間を作らず、というか作れずにいましたが、ツンデレさんが側にいたりしてくれたお陰で陰鬱なエピソードだけじゃなかったんだとホッとしたり、むしろツンデレさんみたいな美少女に慕ってもらえるとか嫉妬で狂いそうになります。
他人の目なんて気にしないどころか、常識も人生経験も相当危ないこのおじさんが異世界でどんなことを繰り広げてきたのか、今後も注目です。
2ー2 たかふみ
期待通りの肩透かしを食らった直後にめっちゃ気になることを言われて、私もたかふみ同様に思わず叫んじゃいましたよ。
おじさんの姉の子供、甥のたかふみ。
彼はなかなかにゲスいです。
17年間昏睡状態だった叔父の面倒なんて見たくないのは理解できますが、おじさんが魔法を使えると知るや否や、簡単に掌を返してYouTuberとして生きていこうと心に決めるとかなかなかな処世術の英才教育を受けてきたことが伺えます。
しかしながら、たかふみは一家離散の憂き目に遭っていたりと、おじさんほどではないにしろ(というかおじさん基準の不幸はヤバい)彼も結構な思い過去を背負っています。
一家離散の事件も気になりますが、個人的にはルームシェアをしていた相手というのが気になりますね。
おじさんが目覚めた時点でたかふみはバイトで生活をしていたようで、家庭状況から考えても大学へ行っていないのでしょう。通学している様子もありませんし。
類友といいますし、ルームシェアをしていた相手というのもたかふみ同様に思い過去を背負った人だと思いますが、同居人と折り合いがつかないとは、一体何があったのか?
色々と嫌なことがあったたかふみですが、一番読者の目線になっておじさんの冒険に期待を寄せたり、ツッコミを入れてくれたりします。
それはもう、異世界ってどんなところでどんな冒険があったのかから、おじさんがツンデレさんへ対する扱いの酷さまで。
基本的には狂言回しに近い立ち位置のたかふみですが、彼も彼で過去や藤宮さんとの今後が気になる人物です。
2ー3 ツンデレさん
ニヤニヤなロマンチックな展開から怒涛の勢いで台無しにされて理解が追いつけないツンデレさんが本当に愛おしいです。
今回の表紙を飾っているのエルフがツンデレさんになります。
おじさんと同じく冒険者を生業としているようです。
恐らくは作中でも随一の貧乏くじを引く人、それがツンデレさんです。
おじさんが吊るされてもその身を挺して庇ったり、瀕死状態のおじさんを介抱してあげたり、それなのに結婚詐欺の被害に遭わされたり。
よくもまあ、このおじさんに付いていけるものだと感心しかありません。
逆にいえば、ツンデレさんはそんなひどい扱いを受け続けても、おじさんを慕えるほどの何かがあったわけでして。
今後はおじさんとツンデレさんの過去に何があったのか、非常に興味深い。
2ー4 藤宮さん
この何とも言えないリアルさを描いて人間関係を表すのが本当に上手だなぁとしみじみ思いました。
たかふみの幼馴染、藤宮さん。
たかふみとは小学生からの友達で、たかふみ宅に勝手に上がっていいと許可されるくらい、たかふみからは信頼を置かれています。
藤宮さんはツンデレとはまた違って、中学生くらいの不器用な恋愛をしているのが何とも素敵です。
おじさんが邪魔で切ろうとしたりと、結構なエグさを持ち合わせているのもまた面白い。
おじさんとツンデレさんの話は過去のものですが、たかふみと藤宮さんの話は過去もあり未来もあります。
今後、二人がどういう風に変化していくのか楽しみです。
2-5 21時入眠的に愛してやまないコマ
いやもう、本当に無言の3連コマの内のこの1コマが大好きなんですよ!
他にもいい絵がたくさんあっただろう、なんだってここなんだとファンの人からは怒られそうなチョイスですが、異世界におけるおじさんの扱いのこれでもか!と表しているやるせないシーン!
泣きながらもオーク(おじさん)から守ろうとする長男(?)と、その後ろで次男を諭しているお姉さん。
モンスターに襲われ”もうダメだ”と思ったところを助けられた、かと思ったらそれ以上の化け物が現れて死を覚悟するのが一気に伝わってきてしまって。
泣き顔がリアルすぎてビビるわ。
3 おまけをちらっと紹介
経緯は不明ですが、おじさんはツンデレさんにパーカーを貸していたいみたいです。
それを返すように求めると、ツンデレさんは”一生返すもんですか”とお可愛いこと言って抵抗します。
で、おじさんは実力行使に出るわけですね。
……。
これは決してやましいことなんてありません。
パーカーを返してもらうだけです。
貸したものを返してもらうのは当然の権利です。
ましてや中世的な世界観であれば服は貴重なんです。
だからおじさん!
早く剝いてしまえ!!!
4 ちょこっと考察と総括を
おじさんとツンデレさんの馴れ初めなども気になりますが、やはりツンデレさん自身の過去が一番気になります。
特に気になったのが、ツンデレさんが指輪を嵌められる時に逡巡するわけですが、その表情の中でおじさんのことを強い敵意を持って睨みつけるようなコマがあります。
これはいったいなぜか?
まだ1巻だけであり、ツンデレさんとおじさんの仲というのも断片的にしか描かれていません。
ですが、それでもツンデレさんは打算的な性格をしているとは思えず、おじさんのことも強く慕っていると思います。
戸惑うのは解りますが、なぜ睨むのか?
実はツンデレさんはバツイチとか?
それにしてはあまりに異性に対して不慣れな印象です。
この時、ツンデレさんはおじさんの人間性がまだわからないから答えを決めあぐねている、と見るべきか?
それなら普通に断ればいいだけです。
となると、ツンデレさんは男性不信となった過去があるのかもしれませんね。
もしくはツンデレさんが強いとはいえ、おじさんのように1人で冒険者をやっているのは仲間から裏切られた過去があるのかもしれません。
仮にツンデレさんにそのような過去があったとして、それがトラウマとなっているのだとしても、おじさんはいつの間にかツンデレさんのトラウマを払拭させていたことになります。
おじさんとツンデレさんの話はすべて過去です。
ツンデレさんがどれほど思いを募らせても、おじさんとの結末は辛いものになります。
おじさんはツンデレさんのことを適当な街で撒いたと言っていましたが、果たしてそれは本当に撒いたのか。
無論、おじさんがツンデレさんの想いに気づいていたけど逃げ出したという展開はないでしょうが、ではいったいなぜツンデレさんはおじさんの前から姿を消したのでしょう。
おじさんから既に結構な目に遭わされているツンデレさんが、そんな簡単におじさんのことを諦めるとは思えませんし。
言えることは、おじさんの異世界の結末は決して明るいものではない、ということでしょう。
2巻が楽しみです。
ではでは~。
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約半年ベルトレス生活を送ってみた
女性はあまり見ないというか、したり、してなかったりするベルト。
男はほぼ必須アイテムといえるのですが、そもそもベルトって必要か?と疑問に思い、ちょっと半年ほどベルトレス生活を送ってみました。
1-1 動機
普段、私はスーツを着る必要のない職業にであり、立場上も最底辺であります。とはいえ、年に2,3回ほどですがやはりスーツを着る時はあります。
で、普段着ることのないスーツを着ると、ズボンのウエストがきつくなったなぁとしみじみ思うことがあるんですよ。(要はデブった) 仕事では運動するなど皆無であり、ジムにも通わず、スポーツもしていませんので、肥えてくるのは当たり前です。
まあ、所詮は一日程度しか着ないので、ウエストのホックを外してベルトでごまかすなんてことで凌いでいました。
ある日、スーツから解放されいつものズボンを履いた時、ふと思ったんです。
ベルトってなんでしているんだ? と。
スーツのズボンのように、ウエストが合わないようなものを履く時は確かに必要だけれど、ウエストが合っていれば別にいらなくないか? と。
1-2 そもそもベルトとは……?
とりあえず、Wikipedia先生に聞いてみると”腰に巻いて、服のずれを防いだり固定させたりするもの”という至極当たり前の答えが出てきました。
ですが、ベルトせずともそんな下がりません。
私は主にチノパンを履いているのですが、むしろベルトのバックルの重量で下がるんじゃないか?と思うことがしばしばです。ベルトを締めて下がるようじゃ、本末転倒ですね。
ベルトをせずに走ってみたりとしましたが、やはり特に下がらない。
むしろ、走りやすくていい。
ちょっと深堀りして調べてみると、ベルトの背景には拳銃や工具を腰に吊るすための取っ掛かりがあると便利、というのに辿り着きました。
西部劇で出てくるようなガンマンなどは、銃を吊り下げ型のホルスターに仕舞っているアレですね。
あとは、大工さんのような様々な工具を常に携帯する必要のある職業だと、吊り下げ型のホルスターは非常に便利で重宝します。
つまり、普通の人が日常生活において、ウエストの合っているズボンであればベルトなんて不要なんですよ。
2-1 実際にやってみてどうだったか
まず、メリット。
腰が軽いです。ベルト自体はそんなに重い物ではないと思っていましたが、バックルなどを考えると総重量はスマホに相当するくらいでしょう。(つまり、。現代人は約スマホ2台分の負荷が腰にかかっている)
腰への負担が小さくなれば、当然、日常生活が楽になります。
またバックルが座った際に結構主張するため感覚的なノイズになるんですよね。それがなくなるので、物事に集中しやすくなったと思います。
そして、デメリット。
ちょっと見た目の印象がどうしても寂しくなります。ですが、シャツインしなければ結局の所ベルトなんて見えないのであまり変わらないですね。
なんにせよ、印象として物足りないや寂しいといったものであって、決して見た目が著しく損なわれるとか格好悪いといったものにはなりません。
あと、スーツを着なくてはならないような公の場ではベルトは根強く必須アイテムとなっているでしょうから、そういう場では忘れないように気をつけないといけませんね。
まあ、そんな忘れることはないと思いますが、心配な人は”公的の場用の服装セット”を作っておくと忘れにくくなると思います。
3-1 総括
ベルトレス生活を送ってみて感じたことは、とにかく腰への負担が小さくなって、日常生活が楽になりました。
また、バックルが座った際に邪魔な感じだったんですが、それがなくなりストレスも軽減。
しかし、見た目の印象が寂しくなることは事実であり、未だに公の場ではベルトは必須でしょうからTPOに気をつけましょう。
現在のスマホが6~7インチのものが主流ですので、私達は案外、結構な負荷が腰にかかっていると思います。
腰は文字通り、身体の要です。
腰を痛めてしまうと何もできないと言われており、それはほぼ事実です。少なくとも、歩くどころか立つことすらままならない状態となります。
見た目はもちろん重要ですが、機能的に足を引っ張っているものに関しては小さなものでもどんどん変えていくのが人生を豊かにしていくものです。
あなたもちょっとベルトレス生活を試してみては?
ではでは~。
感想:お金のいらない国(長島龍人)
※ネタバレあるかも知れませんのでご注意を
70pにも満たないのに、990円した『お金のいらない国』という本。
しかし、その内容は現代社会について深く振り替えざるを得ないような、難しい話でした。
初版は2003年に発行なので、知っている方も多いのではないでしょうか。
私がこの本に出会ったのは(というか知ったのは)最近のことです。
会社からのメールで知りました。
どんなメールの内容だったのかは流し読みでしたのであまり覚えていませんが、
著者の方の落語だったか、何らかの講演があるから観に来てね的なものだったと思います。
読んでみようと思ったのは、
昨今のお金のこと、
僕が大学生の頃に『C』というアニメを観たこと、
小学生の頃に親に「平和な世界なら警察官なんていらないのだから、本来なら警察官なんていない方がいいのにね」なんてしゃらくさい事を言った子供だったからというのが理由でないかと思います。
さて、うざったい前書きもそこそこにして。
お金のいらない国
雰囲気は『キノの旅(時雨沢恵一)』に少し似ています。
キノの旅に出てくる様々な国ほど極端ではありませんが、
世界観は純粋に『もしもこの世界からお金がなくなったらどうなるのだろうか?』を書いたものです。
それはとても不思議で、
お金というものに慣れ親しんだ主人公(すなわち私達)にとっては
漠然とした不安のある優しい世界でした。
物語の開始は、主人公が唐突に見知らぬ街にいつの間にか来ていたところから始まります。
文章を引用するにはちょっと長いので、軽く私の方で変えましたが概ね、以下のような始まり方をします。
ビルが立ち並び、車が行き交う景色。
一見すると、知っている街のようでありますが、行き交う人々は様々な人種でした。
アメリカのどこかの都市かな?
なんて考えていると、品のいい一人の紳士が話しかけてきました。
「ようこそ。お待ちしておりました」
はて。紳士の顔に見覚えもなければ、待ち合わせしていた記憶もない。
当惑する私にお構いなく、街を案内し始める紳士。
案内を受けながら私は尋ねます。
あなたは誰なのか、ここはどこなのか。
対し、紳士は意地の悪い答えを返すじゃありませんか。
「いずれお分かりになると思いますよ」
ここはどこで、紳士はいったいどのような人なのか。
それこそが、作者の言いたいことなのでしょう。
仕事はお金か……?
よく出される対比として、社会主義と資本主義がありますね。
皆さん御存知の通りですが簡単に言うと
社会主義は社会全体を重んじるシステムであり、国民一人一人が平等であるべきという考えです。
どれだけ少ない労働であろうと、国民は一律のお金を給付されます。
弱者というものがいない、優しい思想とも言えるでしょう。
反面、またどれだけ多い労働をしようと、給付されるお金の額は少なく労働した者と同じなので、何らかの才能に秀でた人には何の得もありません。
資本主義は経済活動を重んじるシステムであり、営利目的による物の生産、サービスによって社会を回すという考えです。
労働価値に見合った報酬を受け取れるため、努力すればするほどお金が貯まります。
一人一人が様々な物やサービスの商品化をしていけば、社会全体が豊かになっていきます。
反面、営利目的であることが第一となりやすくので環境破壊や、資産がないと生きていけないため犯罪が生じやすい。
結果だけを見ると、歴史が証明したように資本主義が優れていました。
社会主義の代表、ソ連。
1991年12月26日にソビエト連邦共産党が解散したことで、社会主義は完全崩壊します。
まあ、ソ連の場合、役人たちによる金銭の着服が結構遭ったようなので完全な社会主義とは言えませんが。
しかしながら、今日になって資本主義を振り返ってみるとどうでしょう?
確かに社会主義よりも資本主義は優れていることは間違いありませんが、
様々な弊害、歪み、軋轢があることも事実。
特にひどい弊害は少子化です。
日本が先導するかのように、先進国の出生率は軒並み年々下がり、出生率2.0を下回っている国ばかりです。
出生率は夫婦1組が産む子供の数の全国平均であり、2.0を下回るということは子供を2人以上を産んでいる夫婦は平均に届かないことを意味しています。
ヒトは有性生殖である以上、夫婦一組で2人以上が産まれなかれば自然と減っていきます。
もちろん、人口が多ければ多いほどいいのかと言われれば、それも弊害が生じますし、
生命倫理を無視した科学技術を用いれば、もはや人口動態を制御可能な域に手が届くのも事実です。
少し脱線しましたが、資本主義も特化しすぎれば少子化が生じ、ひいては国家存亡の危機に立つ局面がいずれくるということ。
では、なぜ少子化が起こるのか。
これはやはり弱者に対しての救済が小さすぎる、あるいは的外れというのが原因でしょう。
……って、やばいな、こんなことを書きたかったわけではないんですよ。
閑話休題。
僕がこの記事で一番書きたかったことは、
要するに社会主義だろうと、資本主義だろうと、弊害となる中心にはお金があるということを言いたかったんです。
現代社会において、お金がなくては生活できません。
経済を回さなくては大勢の人が亡くなります。
しかし、この社会システムは”力の持つものが一番偉い”という内容であり、
概して中高生の不良グループと大差ないのでは?
”力”といのが資本主義では”お金”で、不良グループでは”喧嘩”。
むしろ、一度グループに入ったものなら下っ端だろうと守ろうとする不良グループの方がまだ弱者に優しい気もします。
まあ、不良グループに入ったことなどないので想像になりますが。
では、お金というものがなくなったらどうなるのか?
あぁ、ようやく本筋に入れる……。
社会主義同様に、誰も働かなくなる?
誰も仕事をしなくなるでしょうか?
社会を維持するのに最重要項目は子供を育てることです。
子供がいなくなれば間違いなくその国は滅びます。
というか、人類が滅びますね。
では仮に、僕に子供がいたとして、誰も仕事をしない国でどうやって育てるか?
子供が赤ん坊であれば母乳でしばらくは持ちますが、
母乳を出すためにも母親には栄養を摂ってもらわなくてはなりません。
栄養を得るためには食べ物が必要です。
しかし、誰も仕事をしないのであれば米や野菜は作られません。
となれば、魚や鳥、獣の狩りとなるでしょう。山菜も一つの手でしょうが、毒の有無を見分けられなければリスキーにもほどがあります。
しかし、魚も鳥も獣も、人間が狩りを行おうとすると道具が必要です。
すなわち刃物、縄などですね。
しかし包丁はもちろん、縄一本に至るまで誰かが作っていなければ自分で作るしかないわけです。
とまあ、ここまで書けばいい加減、言いたいことが見えてくるでしょうが。
はっきり言って1人や2人で、そんなことを年単位続けるのは不可能です。
つまり、誰も仕事をしない国では子供など育てられるわけがなく、いずれは滅びます。
では、報酬のない仕事なんて誰がするのか?
これはやはり前提が間違った考え方でしょう。
仕事とは社会を回すためのものであり、報酬を得るためのものではない。
社会貢献、社会奉仕の理念があってこその仕事。
よくある軽いセリフかもしれませんが、人は社会を形成しなければならない生物である以上、誰からかの世話なしでは生きていけません。
そのため、わざわざ社会奉仕の貢献度をお金という形にせずとも、社会貢献を行えばその社会におけるサービスを受けられる。
これが報酬にあたるわけですね。
実際、僕たちもお金そのものが必要というより、物であったりサービスであったりが本来の必要なものであり、お金自体を必要としているわけではありません。
よく言われる質問で”無人島に1つだけ持っていけるとしたら何を持っていくか”というのがありますが、それでお金を選ぶ人はいないでしょう。
無人島で札束でできることといえば尻を拭くことくらいです。
お金のいらない国では、皆が皆その理念に従って適度に働くことで非常に調和の取れた、無駄なロスのない社会活動を行っていました。
掃除をしたり、飲食店の店員であったり、生活用を作る人もいれば、それを周知する広報する広告店もあります。
僕たちの世界との違いは、お金を管理や運営する銀行がなかったり、物に値段がなかったりと、お金にまつわる仕事がないこと。
お金はなぜ存在するのか?
僕たちにとってお金は生活に直結するので、生きるためにお金が必要となりますが、ここは一度、僕たちにとってのお金の必要性ではなく、お金そのものに注視します。
お金そのものは紙幣といえば聞こえはいいですが紙でしかなく、同じく硬貨は金属片でしかありません。
では、紙と金属でしかないお金の持つ役割とは?
突き詰めれば、物やサービスといった商品に対する価値の物差しでしかないわけです。
しかし、それはお金のほんの一面でしかありません。
”お金がなくては人々は欲望をコントロールできない”
これは作中で私が衝撃というか、強く印象を受けた台詞です。
頭の中で検証していくと確かにそうかもしれないと納得しました。
暴飲暴食も、過剰な利益追求も、怠惰怠慢も根源となる部分はすべて欲であり、一人一人が制御しなくては社会が成立しないんです。
そう、お金は先述した物差しという役割を持ち、同時に私達の欲望を制御するための装置の役割も果たしているわけです。
このように書くと、欲望を過剰に嫌う人が出てきますが、欲とは決して悪いものではありません。
欲自体は幸福の源でもあります。
欲を満たせば誰しも幸福に包まれるものです。
問題なのは、幸福感を味わい続けたいという欲望をコントロールできない惰弱な理性。
単に欲望を敵とし、徹底的抑え込んだり、無いものとしたりしていては、正しく強靭な理性は得られないでしょう。
無欲は強欲と同じくらい、社会を崩壊させる要因の一つとなる気もします。
そして、お金が人間の欲望制御装置であるからこそ、社会の発展に指向性をつけることができます。
社会の発展となると、それは個人の欲望というより、人間の行動に指向性を与えることといった方が正しいでしょうかね。
人は他の動物と比較すると、個々人で欲望の質が大きく異なります。
欲望の質とは好みと言い換えてもいいでしょう。
音楽、歌、踊り、絵、景色、味、匂い、学問など原初的なものから理性的なものまで正に十人十色の好みがあるのがヒトという生物の大きな特徴です。
この好みに向かう個々人の行動と、お金というもので一定の指向性を与え、社会発展における必要なものに注力させる。
これがお金の持つ本来の役割なのではないでしょうか。
最後に総括を
お金のいらない国は果たして実現可能なのか。
この本を読み終わってからなおも考えていることですが、
正直、自信のある答えに辿り着くことはできませんでした。
ただ、私の答えは”No"です。
確かにお金のいらない国が実現可能となれば、今よりもゆとりと豊かさをもって生きていくことが可能であると思います。
仕事も純粋に他人のためにやるため、仕事のやりがいというのも大きくなるでしょう。
ですが、人間は何らかのメリットがなくては組織というものを作れない生き物なのではないかと私は考えています。
それは多様な価値観をもつ生物であるからこその宿命のようなものではないでしょうか。
お金は欲望の制御装置。
私はこのような見方でお金を見たことがなかったので、衝撃的な台詞でした。
なにせ、今やお金が制御装置としての役割を失いつつあるからです。
富める者はより富むために貧しい者を安く使う、このような図式になりつつあります。
それは弱肉強食の世界とあまり違いはありません。
弱者を食らうための檻。
それが社会と成り果てればいずれは国が瓦解するでしょう。
COVID-19で経済が甚大な打撃を受けた今だからこそ、経済とは、お金とは何かを考えるべき岐路に立っていると思います。
ではでーは。
紙書籍版
電子書籍と紙書籍で読んだ時の記憶の残り方( 一_一)フーム
ブログみたいな自由な書きものって書き出しが難しいなぁと思いながらも、
まあ、タイトル通りの内容です。
書籍における媒体は「紙」と「電子」の2種となりつつある昨今ですが、
電子の方は記憶に残らない、残りにくいという話を結構聞きます。
しかし、電子書籍自体はやはり便利なものでして何十冊あろうと
スマホ、タブレット、PCなどに収まってしまいます。
おまけに欲しいと思ったものは即ダウンロードして読むことができ、
電車などの隙間時間に読むことも可能です。
僕みたいに引っ越しが多い人や電車通勤の人には大きな利点ですな。
まあ、デメリットとしては、
Amazonや楽天、Sonyなどの様々な会社があり、それぞれの会社が提供するアプリでなければ読めません。
”読書”という項目として、一つにまとめることができないのが合わない人には徹底して合わないでしょう。
他方、紙媒体のメリットと言えば、
ぶっちゃけどんな人にも当てはまる共通としたメリットはほぼないのではないかと思います。
強いて言うなら、貸し借りが簡単というところでしょうか。
僕は母や姉、家族間での漫画や小説の貸し借りをしますが、この点においては電子書籍ではちょっと無理がありますね。
(できなくはないのですが、自分のアカウントを教えるようなものですからね。抵抗も強ければ手間でもあります)
ここ数年、僕は専門書、教科書、新書といったものは紙媒体で読み、
一通り読み終わった後は自炊しております。
そして、漫画や小説などは最初からAmazonなり楽天なりからダウンロード購入をするといった形に分けております。
要は、勉強は紙媒体で、娯楽は電子媒体で分別している状態ですね。
当然ながら、子供の頃は漫画なども紙媒体で読んでおりましたが、引っ越しの度に本って結構邪魔だよなぁと思い、電子書籍を購入や自炊をし始めた次第です。
さて、本題。
紙で読むのと、電子で読むの、記憶の残り方に違いってあるのかと言われれば、
間違いなくありますね、これ。
電子書籍の方が記憶に残りにくい、というか、覚えられないような感じです。
最初は単に、年齢による記憶力の低下かと思っていましたが、
確実に何かが違うんですよ。
漫画だと、紙媒体では覚えらるような設定が電子媒体では覚えられない、みたいな!
(超微妙な例えですみません)
あとは、ストーリーの概要は覚えているのですが、”シーン”を思い出せないため新刊を読む度にストーリーがぶつ切り状態から始まると言いますか。
何が違うのだろうと考えた結果、
場所記憶の有無なのではなかろうか、という仮説に辿り着きました。
場所記憶の小難しい解説はWikipedia先生にお任せするとして、
買い物をする際に、購入予定のものを指折りながら考えたりしませんか?
洗剤(親指)、柔軟剤(人差し指)、歯ブラシ(中指)、歯磨き粉(薬指)、トイレットペーパー(小指)……みたいな感じで。
んで、実際にお店に着いた時に、思い出す手がかりとして折った指を見たり。
これと似たようなものが、
「紙媒体にはある」けれど、「電子媒体にはない」気がします。
何が言いたいかといいますと、
紙媒体では印象に残ったシーンが何巻の前半に、
あのストーリーは何巻から何巻まで、
みたいに思い出せるのですが、電子書籍では全然思い出せないのですよ。
この差は何なのかというと、
電子書籍ではスマホなりタブレットなりですが、
これは作業としては平面を指でなぞっているだけ。
しかし、紙ではページをめくっていけば”残りのページ数”が変化します。
左から右(あるいは右から左)へのページ数の変化こそが、
もっと言えば親指でページを留めるための感触なども含め、
記憶に残すための”情報の一部”なのではないかなぁと思いました。
人の記憶は一つを思い出せば連鎖反応的に思い出すもの。
花火を見れば、
去年の花火大会の渋滞はひどかった、
出店で何を買った、
浴衣はどんなのを着た、
などを様々な出来事が掘り起こされ、記憶が刺激されます。
それは僕達が考えている以上に、
一連の行為や動作、あるいは映像や音、体感の感覚などを脳は細分化して記憶し、
紙媒体では”本の内容以外の情報がある”からこそ、
本の内容をより鮮明に思い出せるのではないか。
逆に、電子媒体では”本の内容のみに特化している”からこそ、
本の内容を思い出す手がかりがないのでは、と考えられます。
とまぁ、こんな講釈を垂れてみましたが、実証実験をしたわけではありませんので、
誰かやってみてくれませんかねー。
実はやっぱり年齢のせいだった、てことになる気もします。
ではでーは。