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感想:マンガおはなし数学史(著:仲田紀夫)を読んだよ

最近、統計学を勉強している僕ですが、
『これはアカン。数学を勉強し直さなければ』
と、統計学の前に数学を総復習しています。

 

で。

 

学生の頃と違って、学びにも『余裕』が出てくるんですよね。

まあ、受験勉強と違ってリミットがないから、というのが大きいでしょうね。
他人と競うわけでもないので、伸び伸びと勉強しております。

 

そうすると、
『数字って、どういう経緯で出来たんだろう?』
『1次関数って、歴史上のどこで役に立ったんだろう?』
なんて、『余計なこと』を考えてしまったりします。

 

そこで、
いい感じにざっくりとしていて、
わかりやすい数学史の本を探したら、
出会ったのが本書『マンガおはなし数学史』です。

 

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古代から近代まで、
数学単元ごとにその歴史をマンガでまとめてあります。

年表順ではないので、
そこが少し混乱しやすいところではありますね。

 

2000年12月に刊行されたものですが、
非常に読みやすい良書だと思います。

本書の中で個人的に面白かった数学史を3つ、
記事にしてざっくりとご紹介しようかと思います。

 

 

☑ エピソード1:『なぜ?』はあとから出てきた

古代エジプトではナイル川の氾濫などにより、畑の区画整理などがよくに行われていたそうな。

そうなると、測量技術が磨かれていきます。

 

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出典:著_仲田紀夫、佐々木ケン_『マンガおはなし数学史 これなら読める!これならわかる!』_(2012年10月1日)_㈱講談社 

 

古代ギリシアの学問にて有名なターレスは、エジプトで高度な測量技術を学びました。

 

んで、その技術を応用した『相似な三角形の辺の比が等しい』ことから、ピラミッドの高さを導いたとか。

 

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出典:著_仲田紀夫、佐々木ケン_『マンガおはなし数学史 これなら読める!これならわかる!』_(2012年10月1日)_㈱講談社

 

 このときターレスはなんと、『相似条件』がわかっていなかったそうです。
求められる結果を導く『論理』がわからなかったのですね。

 

さて。
古代ギリシアではアリストテレスを始め、ピタゴラスターレスなど数学というか学問で名を残した人が数多くいます。

 

ここで疑問が。

 

先述した通り、エジプトでは測量技術が発達していました。

 

それを学びにギリシアくんだりでターレスはエジプトに来たわけですが、
ターレスは測量の理屈、すなわち『論理』がわかっていません。

それはエジプト人もです。

 

んじゃ、なんでターレスは後に『円周角の定理』などの証明をしたのに、
エジプト人はしなかったのか?

 

すなわち、論理性をターレスは考え、エジプト人は考えなかったのか?

 

答えはギリシアが平和で暇だったから
実際にこう書いてあるわけではありませんが、ほぼほぼそんなところです。

 

まず、当時のギリシアでは民主制であり、物事を決めるのに人々を納得させる必要があります。

討論や議論が行われるので、聞く人を納得させるための論理性が必要となるわけですね。

 

しかし、エジプトでは君主制なので上からノルマが下されます。

 

で、実際に測量を行う人達はそのノルマがクリアできればいいのです。
そうなると、高度な論理なんて考えたりしません。

 

また、ほぼ同時代の中国では論理が必要でした。

なぜか?

当時の中国はまさに戦乱の世であり、群雄割拠のご時世です。

 

となると、賢人は皇帝に自分の説が以下に優れているのかをアピール、
すなわち皇帝に納得させるための論理性が必要になるわけです。

 

ですが、中国では数学が発達しませんでした。

 

これは先述した戦乱が原因です。

覇を争いの世界において、数学などの学問をやっている余裕なんてなかったわけです。

 


何とも皮肉な話だなぁと思います。

 

当時は役に立つ知識や技術というのは今やすっかり途絶えましたが、
役に立たなかった学問がこの現代まで連綿と残っているわけです。

 

戦争は技術を発展させるなんて言いますが、
平和は知性を発展させるんですねぇ。

 

 

☑ エピソード2:大砲から関数は誕生した

何ともびっくりなことに14世紀頃まで

『発射された物体は推進力を失うまで高度を上げ、推進力を失うと垂直に落下する』

と考えられていたとか。

 

真上に上げればそうなりますが、斜め上に発射してもそうなると思われていたみたいで。

つまりは、放物線を描いて飛ぶという考えがなかったんです。

 

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出典:著_仲田紀夫、佐々木ケン_『マンガおはなし数学史 これなら読める!これならわかる!』_(2012年10月1日)_㈱講談社 

 

これは、アリストテレスが提唱したものが残り続けたみたいです。

紀元前に言われた誤りが1世紀を超越して信じられ続けたとは驚きです。

 

さて、なんだってそんな物体の推進力なんてのを考えるようになったのかというと、
戦争であり、大砲の時代になるわけですよ。

 

火薬も弾も無限ではありません。
やたらぶっ放し続けられるわけではないのです。

 

そうなると、いかに大砲の命中率を上げられるかが重要になります。

 

そこで、弾道研究がなされるようになり、
その研究からグラフが出来上がるわけです。

このグラフ化をしたのがデカルトとなります。

 

そして、グラフ化をすることで図形と方程式が結びつくわけですね。

 

この結びつきから、関数も生まれます。

関数ができると、今度は角度を利用して敵との距離を三角関数で求められます。

大砲の命中精度がどんどん上がっていくわけです。

 

角度一つで距離がわかるとか、やっぱり数学は凄いんですねぇ。

 


☑ エピソード3:暇なヨーロッパの医者とアラビア人の気質

紀元前後の話です。

古代ギリシアを始め、ローマ帝国などその頃のヨーロッパの知識は他を圧倒していました。

で、今度はアラビア人がヨーロッパから学問を逆輸入します。

 

ターレスがエジプトから学び醸成させ、今度は発祥の地であるアラビア人たちが学ぶ。

これも歴史の繰り返しの一つといえますかね。

 

さて。
7世紀頃ですが、アラビアではマホメットが大帝国を造ります。

 

すると、砂漠で遊牧していた人たちがその帝国へと定住するようになったとか。

 

ですが、季節の変わり目は体調を崩しやすいように、
砂漠→大都市ともなると環境の大きな変化で病気になる人が多発。

 

そこで、ギリシアやローマから医者をアラビアへと招いたんですね。

 

ですが、病気は元々が環境の変化から来るものなので、慣れてしまえば患者は減ります。

 

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出典:著_仲田紀夫、佐々木ケン_『マンガおはなし数学史 これなら読める!これならわかる!』_(2012年10月1日)_㈱講談社 

 

そうなると、暇なヨーロッパの医者がアラビアにない知識、
すなわち『幾何学なんてどう? 役に立たんけど』となり、
アラビア人は『役に立たない? 面白そう!』と幾何学を教わったそうな。

 

でもって、アラビア人は更にインド数学も学んだりして行き、
計算技法を取り入れていったそうです。


役に立たないのが面白そうって、現代の日本ではあまり見られないことですね。

ですが、個人的には学問って『考えるための技法』のようなものだと思います。

 

役に立つ、役に立たないとは切り離すべきであり、
アラビア人のように『面白そう!』というところから入るのが一番いいのではないでしょうかね。

 


☑ おまけ:わからない問題は飛ばしなさい(物理)

エピソード1で古代ギリシアでは論理が学問として誕生したことに触れました。

で。
ツェノンという学者が『パラドクス』について考えるんですよね。
そのうちの1つに有名な『アキレスと亀』があります。

 

 

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出典:著_仲田紀夫、佐々木ケン_『マンガおはなし数学史 これなら読める!これならわかる!』_(2012年10月1日)_㈱講談社 

 
頭が三角形になりそうな問ですね。

 

実際にやったら亀なんてあっという間に追い越せるわけですが、

論理的構造の矛盾を指摘せよ、と言われると「うーん?」となります。

 

古代ギリシアにて、この問を鮮やかに解決してみせたのがプラトンです。

 

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出典:著_仲田紀夫、佐々木ケン_『マンガおはなし数学史 これなら読める!これならわかる!』_(2012年10月1日)_㈱講談社

 
いや、それでいいんかーい!!

と、ツッコミを入れながらにしても、思うのです。

 

まあ、ありだな、と。

 

僕ら人間は決して全知全能ではありません。

自分たちがいかに絶えず努力しようとも、追いつけない問題というのはいくらでもあります。

 

そこで考えなければなりません。

果たして自分たちはその問題を正しく取り扱えるのか?と。

 

プラトンの時代ではまだまだ学問の黎明期。

自分たちの無知を知り、後世に託すというのはヒトの特権です。

 

後世に託す、というのは一種の怠慢のように聞こえますが、
今の自分たちの知識で取り扱える範囲を盤石に固めるのは決して用意ではありません。

 

正しく取り扱えないのにフラフラと考えを巡らせ何も成せないよりも、
ずっと建設的で勇気のいる行動ではないでしょうか。

 

 

☑ 本書はどんな人にオススメ?

やはり、一通り高校までの数学を勉強をし終えた
社会人におすすめかなぁと。

一通り学んだがゆえに、
俯瞰して数学というものを捉えるのによい本かと。

 

数学が苦手な学生の助けになるかと言われれば、特にならないと思います。

学問ではなく、教養の本です。

 

ただ、本の学校で学ぶ歴史とは日本史も世界史も、『国の歴史』であり、
文化と戦争の歴史といえます。

そういう歴史の中でも数学や科学が進歩してきました。

 

『歴史の側面』
歴史を別角度から見る、という観点で学生にも読んでもらいたいと一冊です。 


☑ 総括

読み終わって思ったことは、数学って人間臭いなーでした。

役に立たないのを面白がったり(幾何学)、
平和だったから論理が発展していき(古代ギリシア)、
必要故に技術を洗練する術を求め(大砲や計算)、
娯楽であれど本気となれば学問にまで昇華させる(確率やトポロジー)。

 

一番の収穫は、たまに見る
ユークリッド幾何学』と『非ユークリッド幾何学』って何なんだよ?
という疑問が、よくわかったことでしょうかね。

 

他にも面白いエピソードはたくさんあります。
いい感じに雑学力が身に付くので、ご一読してみてはどうでしょう。

 

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